クリスチャン・ディオール(Christian Dior)は、1946年にフランス・パリで自身の名を冠したファッションメゾンを創設しました。DIORは、誕生以来、ラグジュアリーとエレガンスの代名詞として、世界中のファッション業界に多大な影響を与えてきました。
1947年に発表された「ニュールック(New Look)」は、戦後の女性ファッションに革命をもたらしました。ウエストを細く絞り、ふんわりと広がるスカートのシルエットは、女性の美しさを強調し、戦時中の実用的で地味な装いから一変して、華やかでフェミニンなスタイルを提案しました。この革新的なデザインは世界的に大ヒットし、DIORは一躍トップメゾンの仲間入りを果たしました。
1957年、創業者クリスチャン・ディオールが急逝すると、若干21歳のイヴ・サン=ローランが後継者としてクリエイティブディレクターに就任しました。彼は「トラペーズライン」などの新しいスタイルを生み出し、DIORの伝統を守りながらも現代的な要素を加えてブランドを成長させました。その後、1960年代にはマルク・ボアン、1980年代にはジャンフランコ・フェレ、1990年代にはジョン・ガリアーノといったデザイナーが歴任し、それぞれの個性を反映したコレクションを発表しました。
2000年代に入ると、ジョン・ガリアーノのドラマティックでアヴァンギャルドなデザインがDIORの新たな魅力を開花させました。彼の手がけたオートクチュールは、幻想的で壮大なショーとして注目を集め、ブランドのアイデンティティをさらに強固なものにしました。
2012年にはラフ・シモンズがクリエイティブディレクターに就任し、シンプルでモダンなスタイルへと舵を切りました。彼のデザインは、ミニマルでありながらもエレガンスを忘れない、新たなDIORの時代を築きました。その後、2016年にマリア・グラツィア・キウリがブランド初の女性クリエイティブディレクターとして就任し、女性らしさとフェミニズムを意識したデザインを打ち出しています。彼女は「We Should All Be Feminists(私たちは皆フェミニストであるべき)」といったメッセージを込めたTシャツを発表し、ファッションを通じた社会的メッセージの発信にも力を入れています。
DIORは、オートクチュールだけでなく、プレタポルテ、バッグ、シューズ、フレグランス、ビューティーなど多岐にわたる分野で展開しており、特に「レディ・ディオール」や「サドルバッグ」などのアイコニックなバッグは、世代を超えて愛され続けています。また、フレグランスの分野でも「ミス ディオール」や「ジャドール」などの名作を生み出し、世界中の女性を魅了し続けています。
DIORは長い歴史の中で、伝統と革新を巧みに融合させながら、常にモードの最前線を走り続けてきました。これからもラグジュアリーとエレガンスを象徴するブランドとして、世界中のファッション愛好家を魅了し続けることでしょう。